2015年04月08日
春の夜に
こんばんは。胎内市は星がキレイに見える夜です。いかがお過ごしですか?
ようこそ、宮ノ森遊園へ。
桜が咲き始めましたね。いよいよ春らしくなってきました。この季節になると毎年思い出すことがあります。
原動機付自転車、通称・原付についてです。
原付免許。それは最初に手にした自由への招待券でした。そして、原付バイクは、好きな時に好きな場所へ行ける翼でした。
原付免許取得から始まる新しい世界に戸惑いながらも、大人への第一歩を踏み出し、誰もが背伸びをしたがっていたような気がします。
見栄を張り、得意満面に胡散臭い武勇伝を各々が語っていましたが、7馬力そこそこのエンジンが若者に多くの夢を見させ、ヒーローになれたかのような錯覚を与えたのは紛れもない事実でした。
今から話すのは、武勇伝でもなんでもない、退屈な思い出話。
私と青春を駆け抜けた、1台の原付バイクの話。

2003年(平成15年)4月2日。私は念願の原付免許を手にしました。細かい事は忘れてしまいましたが、バイトを始めたばかりだったので、スケジュールを調整しつつ苦労して免許を取得した気がします。
免許は無事に取得しましたが、バイクはなく、とにかく焦っていたような気がします。そんなある日、ついに憧れの原付が納車されました。詳しい経緯は記憶の彼方ですが、確か夜だった気がします。学校から帰るとバイクがありました。これが私とTZRとの出会いでした。不慣れなギア付の原付。とても重たく感じました。
とても大きく、輝いて見えたTZR。しかし、船出は順風満帆とはいきませんでした。
バッテリーの調子が悪く、セルが回りません。“エンジンをかけたい。バイクに乗りたい。”必死でした。友人に電話をし、エンジンの押しがけの方法を聞きました。
数分後、なんとかエンジンをかけることができました。
せっかく掛かったエンジン。エンストしないように必死でした。一つ一つの動作が慎重で、丁寧でした。初めてのバイク。初めてのエンジン付きの乗り物。しかし、燃料はガス欠寸前だったため、感動に浸る余裕もなく、早速、燃料を補給しにガソリンスタンドを目指しました。初めて自分でガソリンの注文をしました。“レギュラーを現金で満タン”この瞬間、大人になれた気がしました。
給油を終えて、少し、ずっしりとしたTZRに乗り、スタンドを背に走り出しました。
楽しかった。とにかく楽しかった。クラッチ操作が、ギアチェンジが、スロットルを回すのが、ブレーキが…。春の、少し眠たげな月の下、時間を忘れ、走り続けました。
どれくらい走り続けたでしょうか。休憩を兼ねて駐車場に入りました。一息ついて、駐車場から出ようと出口に向かった時・・・縁石の脇に砂が溜まっていました。気づくのが遅れたため、明らかなオーバースピード。すでに倒し始めてしまった車体。滑り出したフロントタイヤ。
咄嗟に、強くブレーキレバーを握りました。・・・その瞬間、転倒しました。
自転車で転倒するのとは明らかに違う、強い衝撃。右に倒れたので、右足の膝に痛みを覚えました。けれど、そんなことより、心配だったのは愛車でした。すぐに起き上がり、TZRを起こしました。重いなんて思いませんでした。一度キーを“OFF”にしてから再び“ON”にし、セルを回しました。
少し不機嫌そうにエンジンが始動しました。
ホッとしました。
再び走り出すと、エンジンは先程と変わらずに快調でした。しかし、バイクに問題がないことを確信すると、不意に足が痛くなってきました。
家に向かうことにしました。
自分の部屋に入り、ズボンを脱いで脚を見ました。血が・・・、血が出ていました。予想よりも酷い傷口に、バイクは自転車とは違うということが、身にしみて分かりました。

幾つもの季節を共に過ごし、数え切れない思い出を作ったTZR。今手元にあるのは焼き付いたピストンとプラグ、数枚の写真のみです。
桜の咲く季節に出会い、桜の咲く季節にTZRは私の手から離れました。TZRとの別れ、それは2006年4月8日の事でした。今から9年前の今日、TZRは大きく、輝いて見えました。そう、初めて会ったあの日と同じように。
ようこそ、宮ノ森遊園へ。
桜が咲き始めましたね。いよいよ春らしくなってきました。この季節になると毎年思い出すことがあります。
原動機付自転車、通称・原付についてです。
原付免許。それは最初に手にした自由への招待券でした。そして、原付バイクは、好きな時に好きな場所へ行ける翼でした。
原付免許取得から始まる新しい世界に戸惑いながらも、大人への第一歩を踏み出し、誰もが背伸びをしたがっていたような気がします。
見栄を張り、得意満面に胡散臭い武勇伝を各々が語っていましたが、7馬力そこそこのエンジンが若者に多くの夢を見させ、ヒーローになれたかのような錯覚を与えたのは紛れもない事実でした。
今から話すのは、武勇伝でもなんでもない、退屈な思い出話。
私と青春を駆け抜けた、1台の原付バイクの話。
2003年(平成15年)4月2日。私は念願の原付免許を手にしました。細かい事は忘れてしまいましたが、バイトを始めたばかりだったので、スケジュールを調整しつつ苦労して免許を取得した気がします。
免許は無事に取得しましたが、バイクはなく、とにかく焦っていたような気がします。そんなある日、ついに憧れの原付が納車されました。詳しい経緯は記憶の彼方ですが、確か夜だった気がします。学校から帰るとバイクがありました。これが私とTZRとの出会いでした。不慣れなギア付の原付。とても重たく感じました。
とても大きく、輝いて見えたTZR。しかし、船出は順風満帆とはいきませんでした。
バッテリーの調子が悪く、セルが回りません。“エンジンをかけたい。バイクに乗りたい。”必死でした。友人に電話をし、エンジンの押しがけの方法を聞きました。
数分後、なんとかエンジンをかけることができました。
せっかく掛かったエンジン。エンストしないように必死でした。一つ一つの動作が慎重で、丁寧でした。初めてのバイク。初めてのエンジン付きの乗り物。しかし、燃料はガス欠寸前だったため、感動に浸る余裕もなく、早速、燃料を補給しにガソリンスタンドを目指しました。初めて自分でガソリンの注文をしました。“レギュラーを現金で満タン”この瞬間、大人になれた気がしました。
給油を終えて、少し、ずっしりとしたTZRに乗り、スタンドを背に走り出しました。
楽しかった。とにかく楽しかった。クラッチ操作が、ギアチェンジが、スロットルを回すのが、ブレーキが…。春の、少し眠たげな月の下、時間を忘れ、走り続けました。
どれくらい走り続けたでしょうか。休憩を兼ねて駐車場に入りました。一息ついて、駐車場から出ようと出口に向かった時・・・縁石の脇に砂が溜まっていました。気づくのが遅れたため、明らかなオーバースピード。すでに倒し始めてしまった車体。滑り出したフロントタイヤ。
咄嗟に、強くブレーキレバーを握りました。・・・その瞬間、転倒しました。
自転車で転倒するのとは明らかに違う、強い衝撃。右に倒れたので、右足の膝に痛みを覚えました。けれど、そんなことより、心配だったのは愛車でした。すぐに起き上がり、TZRを起こしました。重いなんて思いませんでした。一度キーを“OFF”にしてから再び“ON”にし、セルを回しました。
少し不機嫌そうにエンジンが始動しました。
ホッとしました。
再び走り出すと、エンジンは先程と変わらずに快調でした。しかし、バイクに問題がないことを確信すると、不意に足が痛くなってきました。
家に向かうことにしました。
自分の部屋に入り、ズボンを脱いで脚を見ました。血が・・・、血が出ていました。予想よりも酷い傷口に、バイクは自転車とは違うということが、身にしみて分かりました。
幾つもの季節を共に過ごし、数え切れない思い出を作ったTZR。今手元にあるのは焼き付いたピストンとプラグ、数枚の写真のみです。
桜の咲く季節に出会い、桜の咲く季節にTZRは私の手から離れました。TZRとの別れ、それは2006年4月8日の事でした。今から9年前の今日、TZRは大きく、輝いて見えました。そう、初めて会ったあの日と同じように。
Posted by 宮森@NDS at 23:01│Comments(0)
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